2014/3/8

自殺の地域間格差拡大に及ぼす地域の経済状況の影響に関する論文出版のお知らせ

自殺対策は、多くの国における公衆衛生分野の重要な課題の一つとなっています。我々の研究グループは最近、日本の自殺格差が社会的または地理的にどのような変遷を辿っているのかに関して評価を行い、この30年の間に、男性において格差が著しく拡大していることを明らかにしました(Suzuki et al., 2013, PLoS One)。この成果を踏まえ、拡大する地域間自殺格差の背景として、地域の社会経済的特性が個人の特性を超えて影響を及ぼしているのか、また影響しているとすれば、近年の地域間格差拡大に伴って影響の程度が強くなっているのかに関して、経年的に検証した論文が European Journal of Public Health に出版されました。本研究は、ハーバード大学、広島大学の研究者らとの共同研究です。

本研究では、25歳から64歳の全人口を対象として、1975年から2010年の35年間にわたる各都道府県における自殺リスクの変遷を評価すると同時に、各都道府県の経済状況(平均収入、平均貯蓄高、平均収入のジニ係数)の変遷を評価することにより、自殺の地域間格差拡大に及ぼす地域の経済状況の影響を検証しました。結果として、男性において、地域の平均貯蓄高や平均収入が低い場合に自殺リスクが高まること、特に近年ではその傾向が強まっていることが示されました。一方でジニ係数に関しては、日本の先行研究結果とは異なり、男女とも自殺リスクとの明確な関連は認められませんでした。

本研究結果は、男性における自殺の要因について、文脈的要素の重要性が高まっていることを示唆しています。

Suzuki E, Kashima S, Kawachi I, Subramanian SV.
Prefecture-level economic conditions and risk of suicide in Japan: a repeated cross-sectional analysis 1975–2010.
Eur J Public Health. 2014; doi:10.1093/eurpub/cku023

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