2012/7/5
第45回疫学研究学会(SER)年次総会(@ミネアポリス)レポート
2012年6月27日から30日に、米国ミネアポリスで開催された第45回疫学研究学会年次総会 (45th Annual Meeting of the Society for Epidemiologic Research)に参加してきました。ミネアポリスはミネソタ州にある都市で、州都セントポールとともに、Twin Cities(双子の町)と呼ばれています。観光地としてはあまり認知されていないため、一般的に、日本人観光客がミネアポリスを訪問する機会はあまりないかもしれません。実際、ガイドブック等でもミネアポリスに特化したものはなく、せいぜい、「アメリカ」というガイドブックに、セントポールとあわせて数ページの説明がある程度…。それでも、デルタ航空のハブ空港があり、成田空港から直行便がとんでいます。とはいえ、ミネアポリスの人口はせいぜい40万人弱ですから、倉敷市よりも人口は少ないわけですね。事実、入国審査時も、審査官に「わざわざなんでミネアポリスなんかに来たんだ?」(注:若干の意訳)と尋ねられる始末…。
そんなミネアポリスですが、かの有名なミシシッピ川の源はミネソタ州にあり、ミネアポリスのダウンタウンのすぐ近くには、全長3780kmのミシシッピ川で唯一の自然の滝であるセントアンソニー滝があります。近代的な高層ビルが立ち並ぶすぐそばで、雄大な滝が流れ落ちる様は、案外、他に類のない都市設計なのかもしれません。しかし、私たちが想像する、いわゆる「滝」のような形状ではなく、浸食を食い止めるために人工的に補強された結果、さながら巨大なウォータースライダーのようになっています。そして、そこを流れるのは、お世辞にも綺麗とはいえない「濁流」です…。このセントアンソニー滝が、ミネアポリスのランドマーク的存在となっているわけですが、残念ながら、“マイナスイオン効果”は期待できないようでした。
さて、以前もお伝えした通り、Society for Epidemiologic Research (SER) は、American Journal of Epidemiologyの母体となっている学会です。毎年、北米(主に米国)の各地で開催されており、近年では、疫学方法論、因果推論のシンポジウムや発表が数多く見られます。今回の総会でも、因果を論じる際に度々言及されるmediationやeffect decompositionの論題のほか、感染症や社会ネットワーク論で重要となるspillover effectやinterferenceの論題について活発な議論が繰り広げられていました。これらの論題は複数のセッションで扱われており、まさに、因果論でいま最もホットなトピックなのではないかと思います。その他にも、competing riskの扱いに関するモデル構築についての発表や、ベイズ理論、Mendelian randomizationに関するセッションも興味深いものです。
特に興味深かったプログラムとして、金曜日の午後のスポットライトセッションでは、「Methodological Advances from the Next Generation of Epidemiologists: eMAC Web Meeting Award Winners」と題して、疫学・統計学理論の次世代を担う若手研究者らのセッションが設けられていました。これは、SERの新たな取り組みとして、今回初めて実施されたものです。来年以降も、このような取り組みが実施されるようです。また、もうひとつ、特に興味深かったプログラムとして、最終日には、「Teaching Epidemiologic Methods」と題して、疫学理論の教育方法に関するシンポジウムが開催されました。シンポジウムの中では、DAGや反事実モデル、生物統計学について、大学院生にどのように教育するのが望ましいのか、エモリー大学、ノース・カロライナ大学、ミネソタ大学に所属している研究者らから発表が行われていました。概ね、疫学・衛生学分野で実施している教育内容と同じではないか…と感じた次第です。(注:若干のバイアスの可能性は否定できません。)
なお、今回の総会では、以下の4演題のポスター発表を行いました。
Suzuki E, Yamamoto E, Takao S, Kawachi I, Subramanian SV.
Clarifying the use of aggregated exposures in multilevel models: self-included vs. self-excluded measures.
Am J Epidemiol. 2012;175(11): Suppl., S17.
Suzuki E, Mitsuhashi T, Tsuda T, Yamamoto E.
A counterfactual approach to bias and modification.
Am J Epidemiol. 2012;175(11): Suppl., S19.
Suzuki E, Kashima S, Kawachi I, Subramanian SV.
Geographic variations in all-cause mortality in Japan: compositional or contextual?
Am J Epidemiol. 2012;175(11): Suppl., S82.
Suzuki E.
Time changes, so do people: reflections on age-period-cohort analyses by distinguishing the concept of time in terms of composition and context.
Am J Epidemiol. 2012;175(11): Suppl., S113.
来年のSERはボストンで開催される予定です。どのようなプログラムになるのか、今から楽しみですね。
(ES)
そんなミネアポリスですが、かの有名なミシシッピ川の源はミネソタ州にあり、ミネアポリスのダウンタウンのすぐ近くには、全長3780kmのミシシッピ川で唯一の自然の滝であるセントアンソニー滝があります。近代的な高層ビルが立ち並ぶすぐそばで、雄大な滝が流れ落ちる様は、案外、他に類のない都市設計なのかもしれません。しかし、私たちが想像する、いわゆる「滝」のような形状ではなく、浸食を食い止めるために人工的に補強された結果、さながら巨大なウォータースライダーのようになっています。そして、そこを流れるのは、お世辞にも綺麗とはいえない「濁流」です…。このセントアンソニー滝が、ミネアポリスのランドマーク的存在となっているわけですが、残念ながら、“マイナスイオン効果”は期待できないようでした。
さて、以前もお伝えした通り、Society for Epidemiologic Research (SER) は、American Journal of Epidemiologyの母体となっている学会です。毎年、北米(主に米国)の各地で開催されており、近年では、疫学方法論、因果推論のシンポジウムや発表が数多く見られます。今回の総会でも、因果を論じる際に度々言及されるmediationやeffect decompositionの論題のほか、感染症や社会ネットワーク論で重要となるspillover effectやinterferenceの論題について活発な議論が繰り広げられていました。これらの論題は複数のセッションで扱われており、まさに、因果論でいま最もホットなトピックなのではないかと思います。その他にも、competing riskの扱いに関するモデル構築についての発表や、ベイズ理論、Mendelian randomizationに関するセッションも興味深いものです。
特に興味深かったプログラムとして、金曜日の午後のスポットライトセッションでは、「Methodological Advances from the Next Generation of Epidemiologists: eMAC Web Meeting Award Winners」と題して、疫学・統計学理論の次世代を担う若手研究者らのセッションが設けられていました。これは、SERの新たな取り組みとして、今回初めて実施されたものです。来年以降も、このような取り組みが実施されるようです。また、もうひとつ、特に興味深かったプログラムとして、最終日には、「Teaching Epidemiologic Methods」と題して、疫学理論の教育方法に関するシンポジウムが開催されました。シンポジウムの中では、DAGや反事実モデル、生物統計学について、大学院生にどのように教育するのが望ましいのか、エモリー大学、ノース・カロライナ大学、ミネソタ大学に所属している研究者らから発表が行われていました。概ね、疫学・衛生学分野で実施している教育内容と同じではないか…と感じた次第です。(注:若干のバイアスの可能性は否定できません。)
なお、今回の総会では、以下の4演題のポスター発表を行いました。
Suzuki E, Yamamoto E, Takao S, Kawachi I, Subramanian SV.
Clarifying the use of aggregated exposures in multilevel models: self-included vs. self-excluded measures.
Am J Epidemiol. 2012;175(11): Suppl., S17.
Suzuki E, Mitsuhashi T, Tsuda T, Yamamoto E.
A counterfactual approach to bias and modification.
Am J Epidemiol. 2012;175(11): Suppl., S19.
Suzuki E, Kashima S, Kawachi I, Subramanian SV.
Geographic variations in all-cause mortality in Japan: compositional or contextual?
Am J Epidemiol. 2012;175(11): Suppl., S82.
Suzuki E.
Time changes, so do people: reflections on age-period-cohort analyses by distinguishing the concept of time in terms of composition and context.
Am J Epidemiol. 2012;175(11): Suppl., S113.
来年のSERはボストンで開催される予定です。どのようなプログラムになるのか、今から楽しみですね。
(ES)