2014/2/5

直接効果に関する新たな指標(Proportion Eliminated)に関する論文出版のお知らせ

医学における因果推論を扱う際に、しばしば、曝露 (exposure) とアウトカム (outcome) の仲介因子 (mediator) の扱いに関心が向けられます。これまで、曝露がアウトカムに及ぼす全効果のうち、どの程度が仲介因子によって介在 (mediation) されているのかを定量的に表す指標としてproportion mediatedが用いられてきました。しかし、この指標の意義は政策決定の観点からは限られているため、この点が問題となっていました。この問題点を踏まえ、2013年にハーバード大学のDr. Tyler J. VanderWeeleが、政策決定の観点から有用と思われる新たな指標としてproportion eliminatedを提唱しました。

この度、proportion eliminatedの有用性を高めるためには、指標の定義を改めることが必要であることを提唱した論文がEPIDEMIOLOGYに出版されました。また、異なるスケールにおけるproportion eliminatedの関連性について論じるとともに、VanderWeele (2013) の誤りを指摘した論文も出版されました。

本論文で論じている内容が、今後、因果推論に関する洞察を深める上で役立つことを期待しています。

Suzuki E, Mitsuhashi T, Tsuda T, Yamamoto E.
Alternative definitions of “proportion eliminated”.
Epidemiology. 2014;25(2):308-309.
本論文へのリンク

Suzuki E, Evans D, Chaix B, VanderWeele TJ.
On the “proportion eliminated” for risk differences versus excess relative risks.
Epidemiology. 2014;25(2):309-310.
本論文へのリンク

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社会経済的状態と死亡との関連に及ぼす健康行動の影響に関するコメンタリー出版のお知らせ

近年の疫学理論の発展に伴い、実証研究で得られた結果を報告する際に、様々な感度分析を行って研究結果の妥当性や頑強性を高めることが広まっています。特に、これらの高度な分析手法によって、「古典的」な研究仮説に対して新たな洞察が得られることも期待されています。

この度、社会経済的状態と死亡との関連に健康行動がどのように関与しているのか、という古典的な社会疫学研究において、感度分析等の新たな手法がどのような新たな洞察を与えるか、というテーマに関するコメンタリーが、EPIDEMIOLOGYに出版されました。本コメンタリーは、パリのInsermの研究者らとの共同執筆です。

コメンタリーの対象となった論文では、marginal structural models (MSMs) を用いて時間依存性交絡因子の調整を試みたほか、変数の測定誤差に関する感度分析を行うなど、様々な手法を用いて古典的な研究仮説を検証していました。本コメンタリーでは、これらの手法を用いることにより、どのような示唆が得られるのかについて論じるとともに、因果論の観点から、本研究テーマの結果の解釈には注意が必要であることを論じています。一連の論文が、今後の疫学研究に重要な示唆を与えることが期待されます。

Chaix B, Evans D, Suzuki E.
Socioeconomic status, health behavior, and mortality: old question plus modern methods equals new insights?
Epidemiology. 2014;25(2):178-181.
本論文へのリンク

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