2012/3/14

寄与危険度分画に関する疫学理論論文出版のお知らせ

寄与危険度分画(attributable fraction)は、研究結果を提示する際に非常に有用な指標であり、疫学のテキストでも重要な概念の一つとして説明されています。1988年にAmerican Journal of Epidemiologyに出版されたGreenlandとRobinsの論文により、寄与危険度分画の概念について整理がなされ、現在、疫学のテキストでは、excess frsactionとetiologic fractionという二つの概念が説明されています。

この度、counterfactual modelとsufficient-cause modelの対応関係を、十分原因が完成する潜在時間の要素を考慮して明示することにより、寄与危険度分画について更なる考察を行った疫学理論論文が、American Journal of Epidemiologyに出版されました。

本論文では、excess fraction、attributable fraction、etiologic fractionの各指標について定義を明確に与え、それぞれがどのように計算されるかを示しました。本論文で扱っている内容は、「因果律をどのように定義するべきか」という根本的な論点と密接に関連しています。本論文で論じている内容が、今後、因果律を扱う際に有用な手引きになることを期待しています。

Suzuki E, Yamamoto E, Tsuda T.
On the relations between excess fraction, attributable fraction, and etiologic fraction.
Am J Epidemiol. 2012;175(6):567-575.

本論文へのリンク (PubMed)

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母親の労働時間と子供の肥満に関する論文出版のお知らせ

母親の労働時間と子供の肥満に関する論文が、Journal of Occupational Healthの最新号に出版されました。本論文では、母親の1日当たりの平均労働時間を自記式調査票で測定し、母親の未就学児の肥満との関係を、generalized estimating equationを用いたロジスティック回帰モデルにより解析しています。就業していない母親の子供に比して、8時間未満の労働をしている母親の子供では、肥満リスクが約70%低いという結果が得られました。本研究は、本邦における母親の労働時間と未就学児の肥満の関連を検証した最初の論文です。

Toshiharu Mitsuhashi, Etsuji Suzuki, Soshi Takao, Hiroyuki Doi.
Maternal working hours and early childhood overweight in Japan: a population-based study.
Journal of Occupational Health. 2012;54(1):25-33.

→本論文へのリンク

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2012/3/3

本邦における社会的・地理的健康格差の変遷に関する論文出版のお知らせ

健康格差は、全世界的に大きな学術的・社会的な注目を集めている論点です。この度、本邦における社会的・地理的健康格差の変遷について検証した論文がBMJ Openに出版されました。本研究は、ハーバード大学、広島大学の研究者らとの共同研究です。

近年、本邦における健康格差の拡大が懸念されていますが、これまで、この論点を詳細に検証し議論した研究は皆無でした。本研究では、成人の早期全死因死亡をアウトカムとして用いて、1970年から2005年の35年間にわたる健康格差の変遷を評価しました。結果として、男女とも、社会的にも地理的にも健康格差が広がっていること、また、本邦における社会的健康格差の変遷は、欧米諸国で一般に見られるパターンとは異なることが示唆されました。

特に、2011年には日本の皆保険制度が50周年を迎え、本邦の健康政策に対する関心は世界的に高まっています。本研究が、本邦における健康格差に関して有用な知見を与えることが期待されます。

Suzuki E, Kashima S, Kawachi I, Subramanian SV.
Social and geographic inequalities in premature adult mortality in Japan: a multilevel observational study from 1970 to 2005.
BMJ Open. 2012;2:e000425. doi:10.1136/bmjopen-2011-000425

本論文へのリンク

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