2011/6/29

東京都におけるディーゼル車排出規制と死亡率に関する研究の論文出版のお知らせ

 東京都において、ディーゼル車排出規制と死亡率に関する関連について検討した研究が出版されました。東京都は、平成15年10月にディーゼル車運行規制を開始し、平成18年4月に規制強化を行っています。今回は、東京都特別区保健所長会と協力し、ディーゼル車運行規制により(特に、平成18年4月の規制強化に注目し)、東京都23区の公衆衛生が向上したのか、つまり死亡率にどのような影響を与えたのかを検討しました。結果として、①東京都が行ったディーゼル車運行規制強化により大気汚染濃度が減少していた、②規制により特に脳血管死亡が8.5%も低下しており、23区の人口に換算するならば、3年間で約2800人の脳血管死亡を予防した、③大気汚染濃度と死亡率の関連は、規制強化後には弱くなっていた(規制後の大気汚染物質内の構成物質の変化・毒性低下の可能性を示唆)ということが示されました。但し、脳血管死亡以外の死亡率は、全国の死亡率の変動を調整することにより低下傾向が有意でなくなったことから、ディーゼル車運行規制による健康への好影響を確定するには更なる研究が必要であると思われます。

Yorifuji T, Kawachi I, Kaneda M, Takao S, Kashima S, Doi H.
Diesel Vehicle Emission and Death Rates in Tokyo, Japan: A Natural Experiment
Science of the Total Environment, in press

本論文へのリンク(PubMed)

東京都におけるディーゼル車排出規制と死亡率に関する研究の論文出版のお知らせ はコメントを受け付けていません

PCB、PCDF混入食用油摂取と死亡率の関係に関する論文掲載のお知らせ

1968年に発生したカネミ油症(PCBとPCDFによる汚染)に関し、高濃度曝露地域での死亡率とそうでない地域の死亡率を1968年~2002年の間比較した研究が出版されました。結果として、曝露直後に全死因死亡や糖尿病・心血管疾患・肺炎気管支炎・肺がんの死亡が曝露地域で増加していました。研究デザインにより薄まるためか(地域レベルでの比較の為)、曝露後10年以降に関しては、はっきりとした死亡率の増加は観察されませんでした。

Kashima S, Yorifuji T, Tsuda T.
Acute non-cancer mortality excess after polychlorinated biphenyls and
polychlorinated dibenzofurans mixed exposure from contaminated rice oil: Yusho
Science of the Total Environment, 2011; 409: 3288-3294

本論文へのリンク(PubMed)

PCB、PCDF混入食用油摂取と死亡率の関係に関する論文掲載のお知らせ はコメントを受け付けていません

2011/6/28

Third North American Congress of Epidemiologyレポート

2011年6月21日から24日にモントリオールで開催された第三回北米疫学学会総会(Third North American Congress of Epidemiology)に参加してきました。モントリオールはカナダ第二の都市で、ケベック州にあります。フランス語が母国語として使われており、フランス語が使われる街としてはパリに次いで世界第二の都市でもあります。そのため、「北米のパリ」と呼ばれており、街中の看板等はフランス語が基本になっています。このように「○○の△△」という表現を耳にすると「日本のエーゲ海」を連想してしまうのは岡山県民の性でしょうか…。

さて、今回で三回目となる「北米疫学学会総会」は、5年に一度、複数の学会が合同で開催されている特別な大規模学会です。支援学会はAmerican College of Epidemiology、Canadian Society for Epidemiology and Biostatistics、American Public Health Association – Epidemiology Section、そして、Society for Epidemiologic Researchの四つですが、そのほかにも、20近い学会が協賛しています。2011年は北米疫学学会総会が開催されるため、毎年開催されている疫学研究学会年次総会(Annual Meeting of Society for Epidemologic Research)は開催されませんでした。例年の疫学研究学会年次総会に比べて、がんに関する発表が多かったように思います。また、3月11日の東日本大震災を受けて、福島第一原発の事故による健康影響に関するPlenary Sessionも開かれていました。

今年は、疫学理論に関して、以下の三演題のポスター発表を行いました。

On the Relations between Excess Fraction, Attributable Fraction, and Etiologic Fraction.

Identification of Operating Mediation and Mechanism in the Sufficient-component Cause Framework.

On the Link between Sufficient-cause Model and Potential-outcome Model.

ポスター発表のほか、多くのシンポジウムやスポットライトセッションがあり、がん研究でも重要な「gene-environment interaction」など、interaction(交互作用)に関する話が比較的多くみられたように思います。ただ、全体を通して、規模が大きかったせいか、学会全体として少し方向性が分かりにくかったような気もしました。個人的には、通常のSERぐらいの規模のほうが、学会全体が引き締まっているような気も致します。

学会終了翌日からは、モントリオールの国際ジャズフェスティバルが開催、ということで、街中では着々と準備が進んでいました。北米疫学学会総会に負けず劣らず(?)、多くの興味深いライブやイベントが計画されていたようです。

来年のSERはミネソタで開催される予定です。どのようなプログラムになるのか、今から楽しみですね。

(ES)

Third North American Congress of Epidemiologyレポート はコメントを受け付けていません

Page Top