研究業績

2010/12/20

ヒ素混入ミルクとがん死亡の関係に関する論文掲載のお知らせ

岡山県において、ヒ素混入ミルク世代とそうでない世代のがん死亡率を比較した研究が出版されました。一方は、5歳区切りの動態統計を利用した研究で、もう一方は生存日まで考慮に入れ検討をしたものです。両者とも、乳幼児期での一点曝露による肝臓がん、すい臓がん、血液腫瘍との関連を指摘しています。ただ、両者ともエコロジカル研究であり、今後の個人対象の研究が必要だと思われます。

Yorifuji T, Tsuda T, Grandjean P
Unusual Cancer Excess after Neonatal Arsenic Exposure from Contaminated Milk Powder
(Journal of the National Cancer Institute, 2010; 102: 360-361)
本論文へのリンク(PubMed)

Yorifuji T, Tsuda T, Doi H, Grandjean P
Cancer excess after arsenic exposure from contaminated milk powder
Environmental Health and Preventive Medicine (published online)
本論文へのリンク

2010/12/17

Sufficient-cause modelとPotential-outcome modelの対応に関する論文掲載のお知らせ

Sufficient-cause modelとPotential-outcome modelは、因果律を扱う際に根幹をなす、二つの重要なモデルです。この度、両者の対応関係を論じたResearch LetterがEpidemiologyに掲載されました。本論文は、二つの二値曝露変数と、二値アウトカム変数を考慮する場合を例として取り上げ、両モデルの対応関係を、完全な対応表を用いて論じています。このことにより、positive monotonicityとno preventive actionという二つの概念の違いを明確に理解できるように助けられます。また、特定のResponse typeやRisk-status patternの同定可能性に関する疫学方法論・因果推論の新しい知見を補完するうえでも有用なものと考えられます。本稿で提示している対応表が、今後、因果律を扱う際に有用な手引きになることを期待しています。

Suzuki E, Yamamoto E, Tsuda T. On the link between sufficient-cause model and potential-outcome model. Epidemiology. 2011;22(1);131-2.

本論文へのリンク(PubMed)
対応表へのリンク(online appendix)

2010/8/17

職場のソーシャル・キャピタルと喫煙に関する論文掲載のお知らせ

職場におけるソーシャル・キャピタルが労働者の喫煙状況にどのような影響を及ぼすかを検証した論文が、BMC Public Healthに出版されました。本論文では、職場におけるソーシャル・キャピタル(信頼、互酬性)を、個人レベル及び会社レベルで評価し、両者と労働者の喫煙状態の関係をマルチレベルロジスティック回帰分析を用いて解析しています。個人レベルの信頼の欠如と喫煙状態には関連が見られませんでしたが、会社レベルの信頼の欠如が高いと社員の喫煙リスクが高まること(文脈的効果)が示唆されました。互酬性と喫煙状態の間には、明確な関連は認められませんでした。

Suzuki E, Fujiwara T, Takao S, Subramanian SV, Yamamoto E, Kawachi I. Multi-level, cross-sectional study of workplace social capital and smoking among Japanese employees. BMC Public Health. 2010;10:489

→本論文へのリンク

2010/8/13

ソーシャル・キャピタルと運動に関する論文掲載のお知らせ

ソーシャル・キャピタルが地域住民の運動量にどのような影響を及ぼすかを検証した論文が、PLoS ONEにオンラインで掲載されました。本論文では、個人レベルのソーシャル・キャピタルを認知的(cognitive)と構造的(structural)に分類し、運動の欠如との関係をロジスティック回帰分析を用いて評価しています。いずれの分類においても、高いソーシャル・キャピタルが運動の増加に関連していることが示唆されました。

Ueshima K, Fujiwara T, Takao S, Suzuki E, Iwase T, Doi H, Subramanian SV, Kawachi I.
Does Social Capital Promote Physical Activity? A Population-based Study in Japan.
PLoS ONE. 5(8): e12135, 2010.

→本論文へのリンク

2010/3/31

運動の健康影響に関する論文掲載のお知らせ

静岡県の高齢者コホート研究において、運動の頻度が全死因死亡・心血管系死亡・癌死亡リスクにどのような影響を及ぼすかを検証した論文がAmericn Journal of Preventive Medicineに掲載されました。本論文では、男女とも、運動の種類を問わず高齢者の運動は全死因死亡・心血管系死亡のリスクを減少させることが示唆されました。癌死亡リスクに関しては明確な関連は認められませんでした。
Physical Activity and Mortality Risk in the Japanese Elderly: A Cohort Study. Am J Prev Med. 38: 410-418, 2010.
Ueshima K, Ishikawa-Takata K, Yorifuji T, Suzuki E, Kashima S, Takao S, Sugiyama M, Ohta T, Doi H.

→ 本論文へのリンク(PubMed)
→ 本論文へのリンク(AJPM)

2010/8/17

職場のソーシャル・キャピタルと労働者の健康に関する論文掲載のお知らせ

職場におけるソーシャル・キャピタルが労働者の健康にどのような影響を及ぼすかを検証した論文が、Social Science and Medicineにオンラインで掲載されました。本論文では、職場におけるソーシャル・キャピタルを、個人レベル及び会社レベルで定義し、両者と労働者の不健康の関係をマルチレベルロジスティック回帰分析を用いて評価しています。個人レベルのソーシャル・キャピタルの欠如(mistrust, lack of reciprocity)が労働者の健康に悪影響を及ぼすだけではなく、会社レベルのソーシャル・キャピタルの欠如(mistrust)も、労働者の不健康に対して文脈的影響(contextual effect)を与えることが示唆されました。

Suzuki E, Takao S, Subramanian SV, Komatsu H, Doi H, Kawachi I.
Does low workplace social capital have detrimental effect on workers’ health?
Soc Sci Med. 2010;70(9):1367–72

本論文へのリンク(PubMed)

2010/1/4

「臨床医のための疫学シリーズ」(第5回)掲載のお知らせ

日本救急医学会雑誌に、「臨床医のための疫学シリーズ:地域中核病院で行う臨床研究」と題して、全5回の連載を行っています。本シリーズは、地域中核病院の臨床医が中心となって臨床研究を行えることを目指し、特に疫学的視点から臨床研究のコア部分について紹介することを目的としています。最終回となる第5回では、基本属性の比較に用いる検定、多変量解析として多く用いられるロジスティック回帰分析について紹介し、最後に生存解析について紹介しています。

臨床医のための疫学シリーズ:地域中核病院で行う臨床研究 第5回
臨床研究における統計学の役割(疫学各論4)
Clinical research based on community hospitals Lesson 5:
The basic role of statistics in clinical studies.
小松裕和、鈴木越治、土居弘幸.
日本救急医学会雑誌 2009; 20:851-9

本論文へのリンク

2009/12/13

長期メチル水銀曝露と高血圧の関係に関する論文掲載のお知らせ

水俣において、長期メチル水銀曝露と高血圧の関係に関して検証した論文が、Environmental Research誌にEpub ahead of printで出版されました。最近、メチル水銀曝露と心血管系疾病(心筋梗塞や高血圧など)の関連について議論が盛んにされていますが、本研究はメチル水銀曝露を受けた水俣地域で同様の仮説を検証した論文です。その結果、メチル水銀曝露を受けた地域では、高血圧の有病割合が高く、高血圧の基礎疾患を持つ方が多くなっていました。

Yorifuji T, Tsuda T, Kashima S, Takao T, Harada M
Long-term exposure to methylmercury and its effects on hypertension in Minamata
(Environmental Research, 2010; 110: 40–46)

本論文へのリンク(PubMed)

2009/11/24

水俣病における臍帯メチル水銀濃度が語りかけるものに関する論文掲載のお知らせ

水俣病において、臍帯メチル水銀濃度が何を語りかけているのか、またそれが水俣病の歴史と合致するのかを検証した論文が、Science of the Total Environment誌に掲載されました。本研究は、メチル水銀の曝露を受けた不知火海周辺4地域で集められた臍帯メチル水銀濃度を時間的・地理的に評価した所、その分布が既知の水俣病の歴史と合致していることを示しました。また、水俣病を、地域で起こった曝露が子宮の環境を汚染していることを示した事例だと紹介しています。

What has methylmercury in umbilical cords told us? – Minamata disease –.
Yorifuji T, Kashima S, Tsuda T, Harada M.
(Science of the Total Environment. 2009; 408: 272-276)

本論文へのリンク(PubMed)

2009/11/9

「臨床医のための疫学シリーズ」(第4回)掲載のお知らせ

日本救急医学会雑誌に、「臨床医のための疫学シリーズ:地域中核病院で行う臨床研究」と題して、全5回の連載を行っています。本シリーズは、地域中核病院の臨床医が中心となって臨床研究を行えることを目指し、特に疫学的視点から臨床研究のコア部分について紹介することを目的としています。第4回では、バイアスに関して、選択バイアス、情報バイアス、交絡バイアスの観点から解説を行うとともに、研究結果の解釈の仕方に関して紹介しています。最終回もご期待ください。

臨床医のための疫学シリーズ:地域中核病院で行う臨床研究 第4回
バイアスの考え方、結果の解釈の仕方(疫学各論3)
Clinical research based on community hospitals Lesson 4:
How to interpret bias and results of clinical research.
小松裕和、鈴木越治、土居弘幸.
日本救急医学会雑誌 2009; 20:794-800

本論文へのリンク

<Erratum>
798ページ左欄にて、以下の文に関して修正があります。
修正前:バイアスが生じる要素がある場合には,そのバイアスが「真の値」から「推定値」を「どの方向」に「どの程度」ずらすようなバイアスか,つまり過大評価(away the null:リスク比の場合は「1」に近づく)するバイアスか,過小評価(toward the null:リスク比の場合は「1」から遠ざかる)するバイアスかを2×2表を用いて検討をする。

修正後:バイアスが生じる要素がある場合には,そのバイアスが「真の値」から「推定値」を「どの方向」に「どの程度」ずらすようなバイアスか,つまり過大評価(away the null:リスク比の場合は「1」から遠ざかる)するバイアスか,過小評価(toward the null:リスク比の場合は「1」に近づく)するバイアスかを2×2表を用いて検討をする。

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