研究業績

2012/3/16

職場のソーシャル・キャピタルと全死因死亡に関する論文出版のお知らせ

職場におけるソーシャル・キャピタルが、労働者の全死因死亡リスクにどのような影響を及ぼすかを検証した論文が、American Journal of Public Healthに出版されました。本研究は、フィンランド、米国、英国の研究者らとの共同研究であり、フィンランドの公務員28043人を対象とした大規模前向きコホート研究です。5年間の追跡調査のデータをもとに、Cox proportional hazard model、及び、fixed-effects logistic regressionを用いて解析を実施しました。その結果、いずれの解析方法を用いた場合でも、職場のソーシャル・キャピタルが高いと全死因死亡リスクが減少することが示唆されました。本研究は、職場のソーシャル・キャピタルと死亡リスクの関連を評価した、最初の研究です。

Oksanen T, Kivimäki M, Kawachi I, Subramanian SV, Takao S, Suzuki E, Kouvonen A, Pentti J, Salo P, Virtanen M, Vahtera J.
Workplace social capital and all-cause mortality: A prospective cohort study of 28043 public-sector employees in Finland.
Am J Public Health. 2011;101(9):1742-8.

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2012/3/16

EHPに掲載された水俣病総論論文に対するレター出版のお知らせ

Environmental Health Perspective誌に2010年に掲載されました水俣病総論論文に対するレターが掲載されました。その総説論文はenvironmental health research implicationsというタイトルでしたが、以下のような点で問題がある(歴史を彎曲し大事なimplicationを伝えていない)とレターで指摘しています。①病因物質(メチル水銀)がわからないと対処できなかったように記載していること、②メチル水銀中毒の診断が難しかったように記載していること、③2009年に成立した特別措置法により残っているメチル水銀曝露有症者に補償が行われているように記載していること、④40年経ってチッソ工場内での猫実験が公表されたかのような(間違った)記載をしていること、⑤水俣病の場合、政府からの研究費が利益相反を引き起こす可能性があること。

Toshihide Tsuda, Takashi Yorifuji, Masazumi Harada. Environmental health research implications of methylmercury. Environmental Health Perspective 2011; 119: 284 (Correspondence)

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2012/3/16

東京都におけるディーゼル車排出規制と死亡率に関する研究の論文出版のお知らせ

 東京都において、ディーゼル車排出規制と死亡率に関する関連について検討した研究が出版されました。東京都は、平成15年10月にディーゼル車運行規制を開始し、平成18年4月に規制強化を行っています。今回は、東京都特別区保健所長会と協力し、ディーゼル車運行規制により(特に、平成18年4月の規制強化に注目し)、東京都23区の公衆衛生が向上したのか、つまり死亡率にどのような影響を与えたのかを検討しました。結果として、①東京都が行ったディーゼル車運行規制強化により大気汚染濃度が減少していた、②規制により特に脳血管死亡が8.5%も低下しており、23区の人口に換算するならば、3年間で約2800人の脳血管死亡を予防した、③大気汚染濃度と死亡率の関連は、規制強化後には弱くなっていた(規制後の大気汚染物質内の構成物質の変化・毒性低下の可能性を示唆)ということが示されました。但し、脳血管死亡以外の死亡率は、全国の死亡率の変動を調整することにより低下傾向が有意でなくなったことから、ディーゼル車運行規制による健康への好影響を確定するには更なる研究が必要であると思われます。

Yorifuji T, Kawachi I, Kaneda M, Takao S, Kashima S, Doi H.
Diesel Vehicle Emission and Death Rates in Tokyo, Japan: A Natural Experiment
Science of the Total Environment, in press

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2011/6/29

PCB、PCDF混入食用油摂取と死亡率の関係に関する論文掲載のお知らせ

1968年に発生したカネミ油症(PCBとPCDFによる汚染)に関し、高濃度曝露地域での死亡率とそうでない地域の死亡率を1968年~2002年の間比較した研究が出版されました。結果として、曝露直後に全死因死亡や糖尿病・心血管疾患・肺炎気管支炎・肺がんの死亡が曝露地域で増加していました。研究デザインにより薄まるためか(地域レベルでの比較の為)、曝露後10年以降に関しては、はっきりとした死亡率の増加は観察されませんでした。

Kashima S, Yorifuji T, Tsuda T.
Acute non-cancer mortality excess after polychlorinated biphenyls and
polychlorinated dibenzofurans mixed exposure from contaminated rice oil: Yusho
Science of the Total Environment, 2011; 409: 3288-3294

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2011/5/24

環境要因と季節性インフルエンザの発症に関する論文掲載のお知らせ

環境要因(気温と相対湿度)とインフルエンザ発症の関連を季節内(2006-07年冬季)に限定して定量的に検証した論文がActa Medica Okayamaに掲載されました。公衆衛生上、インフルエンザは大きな問題ですが、インフルエンザシーズン内に、環境要因が季節性インフルエンザの発症にどのように影響を及ぼしているかは未だ解明されていません。そこで、岡山市内の某小児科医院を受診し、インフルエンザと診断された患者を対象としてケースクロスオーバー研究を行い、発症日から発症10日前までの平均気温と平均相対湿度が発症に与える影響を日ごとに推定しました。本研究は、冬季内の低気温、特にインフルエンザの潜伏期間(3日間)以前の低気温がインフルエンザ発症のリスクを高めることを示唆しています。

Tsuchihashi Y, Yorifuji T, Takao S, Suzuki E, Mori S, Doi H, Tsuda T.
Environmental factors and seasonal influenza onset in Okayama city, Japan: case-crossover study.
Acta Med Okayama. 2011;65(2):97-103.

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2011/5/24

給食弁当を原因とするSalmonella Braenderupによる食中毒に関する論文掲載のお知らせ

2008年に岡山市で発生した食中毒事件の発生要因を検証した論文がActa Medica Okayamaに出版されました。先進国においてはメジャーでありながら我が国では行われることが稀な疫学解析によって、卵とじが本食中毒の原因食品であることを明らかにしました。患者便の検査の結果、Salmonella Braenderupが病因物質であることが判明しました。また、施設調査から調理上の問題点を検討した結果、Salmonella Braenderupに汚染された未殺菌液卵の不十分な加熱、あるいは不適切な取り扱い(二次汚染)が原因であると考えられました。さらにサルモネラによる食中毒の発生防止策を提示しました。

Mizoguchi Y, Suzuki E, Tsuchida H, Tsuda T, Yamamoto E, Nakase K, Doi H.
Outbreak of Salmonella Braenderup infection originating in boxed lunches in Japan in 2008.
Acta Med Okayama. 2011;65(2):63-9.

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2011/4/11

長期メチル水銀曝露と精神症状の関係に関する論文掲載のお知らせ

水俣において、曝露地域一般人口を対象にした長期メチル水銀曝露と精神症状の関係に関して検証した論文が、Environmental International誌にEpub ahead of printで出版されました。メチル水銀中毒による神経症状はよく知られていますが、今回の研究はメチル水銀中毒による精神症状(読み書きの障害、感情鈍麻・意志(意欲)減退など)の存在も示唆しています。特に、胎児期に曝露された集団と高齢の方で有病割合が高くなっていました。また、その当時、水俣病と公式に認定されていた方を除いても結果は変わりませんでした。

Yorifuji T, Tsuda T, Inoue S, Takao T, Harada M
Long-term exposure to methylmercury and psychiatric symptoms in residents of Minamata, Japan
(Environmental International, in press)

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2011/4/11

日本におけるタバコ政策コンプライアンスの地域差に関する論文掲載のお知らせ

健康増進法のコンプライアンスの地域差に関して検証した論文が、Tobacco Control誌にEpub ahead of printで出版されました。健康増進法への県毎の取り組みが、喫煙割合の減少、肺がん死亡率減少に関連しているかを検討しました。その結果、コンプライアンスが高いと地域の喫煙割合が減少していました。また、タバコ消費が減少している地域ほど、肺がん死亡率も減少していました。また、タバコ葉の生産が多い県ほど、上記コンプライアンスが低くなっていましたし、喫煙割合の減少も小さくなっていました。

Yorifuji T, Tanihara S, Takao S, Kawachi I
Regional disparities in compliance with tobacco control policy in Japan: an ecological analysis
(Tobacco Control, in press)

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2011/4/11

大気汚染と脳血管疾患の関係に関する論文掲載のお知らせ

大気汚染曝露と脳血管疾患死亡の関係に関して検証した論文が、J Occup Environ Med誌に出版されました。検討した大気汚染物質(二酸化窒素と微小粒子状物質)が、脳梗塞や出血性脳血管疾患(くも膜下出血、脳内出血)と関連していました。大気汚染曝露と脳梗塞の関連についての研究は多く見られますが、今回の研究は大気汚染物質が出血性脳血管疾患と関連していることを示唆しています。

Yorifuji T, Kawachi I, Sakamoto T, Doi H
Associations of outdoor air pollution with hemorrhagic stroke mortality
(J Occup Environ Med. 2011 Feb;53(2):124-6)

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2011/4/4

MediationとMechanismの同定に関する疫学理論論文掲載のお知らせ

これまで多くの研究において、mediation(介在)とmechanism(メカニズム)は論じられていますが、これらの概念は十分に整理されておらず、因果律における枠組みも明確には理解されていませんでした。この度、mediationとmechanismをsufficient-component cause frameworkの基で概念化し、それらをどのように同定することができるのかを論じた理論論文がEuropean Journal of Epidemiologyに出版されました。本論文では、それぞれmediationとmechanismのpresenceとoperationを区別して概念化し、mediationとmechanismの関係を整理しました。その上で、これらがpotential-outcome frameworkの基で定義されるdirect and indirect effectsとどのような対応関係にあるのかを示し、mechanismとmediationを同定するための十分条件を明らかにしました。加えて、total effectをどのように分解することができるのかに関して、新たな枠組みを提示しています。このことにより、これまで十分に整理されていなかったmediationとmechanismの概念の理解が明確になるものと考えられます。本稿で論じている内容が、今後、因果律を扱う際に有用な手引きになることを期待しています。

Suzuki E, Yamamoto E, Tsuda T. Identification of operating mediation and mechanism in the sufficient-component cause framework. Eur J Epidemiol. DOI 10.1007/s10654-011-9568-3.

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