研究業績

2012/3/15

若年者のソーシャル・キャピタルと口の健康に関する論文出版のお知らせ

若年者において、家族・地域・学校のソーシャル・キャピタル(信頼、インフォーマルな社会統制、互酬性)と口の主観的健康の関係を評価した論文が、Community Dentistry and Oral Epidemiologyに出版されました。本研究は、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科予防歯科学分野、及び、ハーバード大学公衆衛生大学院の研究者らとの共同研究です。

家族のソーシャル・キャピタルと口の主観的健康には関連が認められませんでしたが、地域への信頼が低い、あるいは、学校で教師と生徒の信頼が低いと、口の主観的健康が不良である傾向が見られました。また、逸脱行動を規制するインフォーマルな社会統制が強いと口の主観的健康は不良となる可能性が示唆されました。欧米の研究では、インフォーマルな社会統制が強いと健康に良い影響を与えるとの報告がありますが、本論文では逆の結果となりました。これは、インフォーマルな社会統制が文化的背景に依って異なる作用を及ぼしうることを示唆しており、ソーシャル・キャピタルの“負の側面”の一例とも考えられます。

Furuta M, Ekuni D, Takao S, Suzuki E, Morita M, Kawachi I.
Social capital and self-rated oral health among young people.
Community Dent Oral Epidemiol. doi: 10.1111/j.1600-0528.2011.00642.x

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2012/3/16

職場のソーシャル・キャピタルと高血圧治療アドヒアランスに関する論文出版のお知らせ

職場におけるソーシャル・キャピタルが、労働者の高血圧治療薬アドヒアランスにどのような影響を及ぼすかを検証した論文が、PLoS Oneに出版されました。本研究は、フィンランド、米国、ポーランドの研究者らとの共同研究であり、フィンランドの公務員3515人を対象とした前向きコホート研究です。高血圧治療薬の処方箋データをもとに、1年間の追跡期間におけるdays-not-treatedをアドヒアランスの指標として評価しました。Negative binomial regression modelを用いて解析を実施しました。その結果、職場のソーシャル・キャピタルと高血圧治療薬アドヒアランスの間には、一定の関係は認められませんでした。今後も、職場のソーシャル・キャピタルに関する包括的な研究が期待されます。

Oksanen T, Kawachi I, Kouvonen A, Suzuki E, Takao S, Sjösten N, Virtanen M, Pentti J, Vahtera J, Kivimäki M.
Workplace social capital and adherence to antihypertensive medication: a cohort study.
PLoS ONE. 2011;6(9): e24732.

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2012/3/16

インドネシアにおける妊婦健診の頻度と新生児死亡の関連に関する論文出版のお知らせ

インドネシアにおいて行われた第5回Demographic Health Survey(2006-07)参加者を対象にし、妊婦健診の頻度と新生児死亡の関連に関して検討した論文が掲載されました。結果として、妊婦健診を多く受けている妊婦から産まれる児の方で新生児死亡が少なく、この傾向は妊娠第三期で明瞭でした。この結果は、インドネシアにおける妊婦のケアに対して、貴重なrecommendationとなるかもしれません。

Ibrahim J, Yorifuji T, Tsuda T, Kashima S, Doi H.
Frequency of Antenatal Care Visits and Neonatal Mortality in Indonesia.
Journal of Tropical Pediatrics (doi: 10.1093/tropej/fmr067)

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2012/3/16

職場のソーシャル・キャピタルと全死因死亡に関する論文出版のお知らせ

職場におけるソーシャル・キャピタルが、労働者の全死因死亡リスクにどのような影響を及ぼすかを検証した論文が、American Journal of Public Healthに出版されました。本研究は、フィンランド、米国、英国の研究者らとの共同研究であり、フィンランドの公務員28043人を対象とした大規模前向きコホート研究です。5年間の追跡調査のデータをもとに、Cox proportional hazard model、及び、fixed-effects logistic regressionを用いて解析を実施しました。その結果、いずれの解析方法を用いた場合でも、職場のソーシャル・キャピタルが高いと全死因死亡リスクが減少することが示唆されました。本研究は、職場のソーシャル・キャピタルと死亡リスクの関連を評価した、最初の研究です。

Oksanen T, Kivimäki M, Kawachi I, Subramanian SV, Takao S, Suzuki E, Kouvonen A, Pentti J, Salo P, Virtanen M, Vahtera J.
Workplace social capital and all-cause mortality: A prospective cohort study of 28043 public-sector employees in Finland.
Am J Public Health. 2011;101(9):1742-8.

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2012/3/16

EHPに掲載された水俣病総論論文に対するレター出版のお知らせ

Environmental Health Perspective誌に2010年に掲載されました水俣病総論論文に対するレターが掲載されました。その総説論文はenvironmental health research implicationsというタイトルでしたが、以下のような点で問題がある(歴史を彎曲し大事なimplicationを伝えていない)とレターで指摘しています。①病因物質(メチル水銀)がわからないと対処できなかったように記載していること、②メチル水銀中毒の診断が難しかったように記載していること、③2009年に成立した特別措置法により残っているメチル水銀曝露有症者に補償が行われているように記載していること、④40年経ってチッソ工場内での猫実験が公表されたかのような(間違った)記載をしていること、⑤水俣病の場合、政府からの研究費が利益相反を引き起こす可能性があること。

Toshihide Tsuda, Takashi Yorifuji, Masazumi Harada. Environmental health research implications of methylmercury. Environmental Health Perspective 2011; 119: 284 (Correspondence)

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2012/3/16

東京都におけるディーゼル車排出規制と死亡率に関する研究の論文出版のお知らせ

 東京都において、ディーゼル車排出規制と死亡率に関する関連について検討した研究が出版されました。東京都は、平成15年10月にディーゼル車運行規制を開始し、平成18年4月に規制強化を行っています。今回は、東京都特別区保健所長会と協力し、ディーゼル車運行規制により(特に、平成18年4月の規制強化に注目し)、東京都23区の公衆衛生が向上したのか、つまり死亡率にどのような影響を与えたのかを検討しました。結果として、①東京都が行ったディーゼル車運行規制強化により大気汚染濃度が減少していた、②規制により特に脳血管死亡が8.5%も低下しており、23区の人口に換算するならば、3年間で約2800人の脳血管死亡を予防した、③大気汚染濃度と死亡率の関連は、規制強化後には弱くなっていた(規制後の大気汚染物質内の構成物質の変化・毒性低下の可能性を示唆)ということが示されました。但し、脳血管死亡以外の死亡率は、全国の死亡率の変動を調整することにより低下傾向が有意でなくなったことから、ディーゼル車運行規制による健康への好影響を確定するには更なる研究が必要であると思われます。

Yorifuji T, Kawachi I, Kaneda M, Takao S, Kashima S, Doi H.
Diesel Vehicle Emission and Death Rates in Tokyo, Japan: A Natural Experiment
Science of the Total Environment, in press

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2011/6/29

PCB、PCDF混入食用油摂取と死亡率の関係に関する論文掲載のお知らせ

1968年に発生したカネミ油症(PCBとPCDFによる汚染)に関し、高濃度曝露地域での死亡率とそうでない地域の死亡率を1968年~2002年の間比較した研究が出版されました。結果として、曝露直後に全死因死亡や糖尿病・心血管疾患・肺炎気管支炎・肺がんの死亡が曝露地域で増加していました。研究デザインにより薄まるためか(地域レベルでの比較の為)、曝露後10年以降に関しては、はっきりとした死亡率の増加は観察されませんでした。

Kashima S, Yorifuji T, Tsuda T.
Acute non-cancer mortality excess after polychlorinated biphenyls and
polychlorinated dibenzofurans mixed exposure from contaminated rice oil: Yusho
Science of the Total Environment, 2011; 409: 3288-3294

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2011/5/24

環境要因と季節性インフルエンザの発症に関する論文掲載のお知らせ

環境要因(気温と相対湿度)とインフルエンザ発症の関連を季節内(2006-07年冬季)に限定して定量的に検証した論文がActa Medica Okayamaに掲載されました。公衆衛生上、インフルエンザは大きな問題ですが、インフルエンザシーズン内に、環境要因が季節性インフルエンザの発症にどのように影響を及ぼしているかは未だ解明されていません。そこで、岡山市内の某小児科医院を受診し、インフルエンザと診断された患者を対象としてケースクロスオーバー研究を行い、発症日から発症10日前までの平均気温と平均相対湿度が発症に与える影響を日ごとに推定しました。本研究は、冬季内の低気温、特にインフルエンザの潜伏期間(3日間)以前の低気温がインフルエンザ発症のリスクを高めることを示唆しています。

Tsuchihashi Y, Yorifuji T, Takao S, Suzuki E, Mori S, Doi H, Tsuda T.
Environmental factors and seasonal influenza onset in Okayama city, Japan: case-crossover study.
Acta Med Okayama. 2011;65(2):97-103.

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2011/5/24

給食弁当を原因とするSalmonella Braenderupによる食中毒に関する論文掲載のお知らせ

2008年に岡山市で発生した食中毒事件の発生要因を検証した論文がActa Medica Okayamaに出版されました。先進国においてはメジャーでありながら我が国では行われることが稀な疫学解析によって、卵とじが本食中毒の原因食品であることを明らかにしました。患者便の検査の結果、Salmonella Braenderupが病因物質であることが判明しました。また、施設調査から調理上の問題点を検討した結果、Salmonella Braenderupに汚染された未殺菌液卵の不十分な加熱、あるいは不適切な取り扱い(二次汚染)が原因であると考えられました。さらにサルモネラによる食中毒の発生防止策を提示しました。

Mizoguchi Y, Suzuki E, Tsuchida H, Tsuda T, Yamamoto E, Nakase K, Doi H.
Outbreak of Salmonella Braenderup infection originating in boxed lunches in Japan in 2008.
Acta Med Okayama. 2011;65(2):63-9.

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2011/4/11

長期メチル水銀曝露と精神症状の関係に関する論文掲載のお知らせ

水俣において、曝露地域一般人口を対象にした長期メチル水銀曝露と精神症状の関係に関して検証した論文が、Environmental International誌にEpub ahead of printで出版されました。メチル水銀中毒による神経症状はよく知られていますが、今回の研究はメチル水銀中毒による精神症状(読み書きの障害、感情鈍麻・意志(意欲)減退など)の存在も示唆しています。特に、胎児期に曝露された集団と高齢の方で有病割合が高くなっていました。また、その当時、水俣病と公式に認定されていた方を除いても結果は変わりませんでした。

Yorifuji T, Tsuda T, Inoue S, Takao T, Harada M
Long-term exposure to methylmercury and psychiatric symptoms in residents of Minamata, Japan
(Environmental International, in press)

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