研究業績

2014/2/7

ポリ塩化ビフェニルとポリ塩化ジベンゾフランの混合物に汚染した米ぬか油の曝露による死産率と二次的性比の地域的検討に関する論文掲載のお知らせ

1968年に発生した、カネミ油症はPCBとPCDFの混合汚染として知られていますが、そのカネミ油症における周産期指標に関する知見は限られています。今回、深刻な被害があった2地域を対象に、PCBとPCDFの混合物曝露による死産率と二次性比(出生時の性比)の影響を評価致しました。結果として、曝露を受けた地域では1968年以降死産率が上昇し、男児の出生が減っていました。実際、1968年以降15年間は、自然死産率が男性比の減少と一致していました(つまり、死産率が増加している時期に、男の子の出生が減っていました。)。PCBとPCDFの混合物の曝露により曝露後15年間、死産率と性比が影響を受けていたと考えられます。

Yorifuji T, Kashima S, Tokinobu A, Kato T, Tsuda T.
Regional impact of exposure to a polychlorinated biphenyl and polychlorinated dibenzofuran mixture from contaminated rice oil on stillbirth rate and secondary sex ratio. Environ Int. 2013 Jun 1; 59 :12-15.

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2014/2/7

大きな道路近傍への居住と出生時アウトカムに関する論文掲載のお知らせ

大気汚染曝露が早産や低出生体重児のリスクを上昇させると考えられています。今回は、そのような状況の中、どのような社会経済的状況や属性を持った両親の場合、大気汚染の影響が強くなるのかを検討いたしました。結果として、大きな道路近傍の居住者の方が早産や低出生体重児の出生が多くなっていました。また、社会経済的状況、母親の糖尿病既往、高血圧既往、喫煙習慣が大気汚染の影響が強くなることに寄与していました。

Yorifuji T, Naruse H, Kashima S, Takao S, Murakoshi T, Doi H, Kawachi I.
Residential proximity to major roads and adverse birth outcomes: a hospital-based study. Environ Health. 2013 Apr 18;12(1):34.

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2014/2/7

水俣病1977年診断基準の批判的吟味に関する論文掲載のお知らせ

大規模なメチル水銀中毒による食中毒が水俣で発生したことはよく知られています。患者として認定する為の、認定制度とその診断基準が現在も利用されていますが、その診断基準の妥当性に関して評価した研究は少ないので検討を行いました。1971年の悉皆調査の結果を利用して検証した所、公式に認定された患者を除いてみても、曝露地域の多くの住民が神経学的所見を呈していました。また、診断のゴールドスタンダードとして四肢の感覚障害を利用した所、診断基準の感度は66%でした。よって、公式の認定制度や現在の診断基準は水俣病の発生を過小評価していると言えます。

Yorifuji T, Tsuda T, Inoue S, Takao S, Harada M, Kawachi I.
Critical appraisal of the 1977 diagnostic criteria for Minamata disease. Arch Environ Occup Health. 2013;68(1):22-9.

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2014/2/7

日本における早産と低出生体重児のトレンドに関する論文掲載のお知らせ

最近、乳児死亡率が減少しているにも関わらず、早産と低出生体重児が増加している背景を受け、増加に寄与する要因の検討を行いました。また、海外の研究と同じく、産科的介入がこれらの増加に寄与している場合、産科的介入が新生児の出生児のアウトカム(アプガースコア、血液ガス、NICU入院)にどのように影響を与えているかを検討しました。結果として、早産、特に医療的介入を受けて産まれた早産が増加しており、早産の増加と低出生児の増加とも産科的介入の変化によって一番説明されていました。増加が見られる反面、出生時のアウトカムは悪くはなっていませんでした。今後、産科的介入によって生まれた児のアウトカムの追跡、早産児のアウトカムの追跡が必要になると思われます。

Yorifuji T, Naruse H, Kashima S, Murakoshi T, Kato T, Inoue S, Doi H, Kawachi I. Trends of preterm birth and low birth weight in Japan: a one hospital-based study. BMC Pregnancy Childbirth. 2012 Dec 26;12:162.

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2014/2/7

大気汚染慢性曝露と脳血管疾患や肺がんとの関連に関する論文掲載のお知らせ

高齢者において、交通由来大気汚染による慢性曝露が心肺血管系疾患や肺がん死亡リスクにどのような影響を及ぼすかを検証しました。本研究は、個人レベルの交通由来の大気汚染濃度を推定し、心肺血管系疾患や肺がん死亡との関連を検証しました。結果として、大気汚染による慢性曝露が日本でも全死因死亡、心肺血管系死亡、肺がん死亡を増加させていることを示しました。

Yorifuji T, Kashima S, Tsuda T, Ishikawa-Takata K, Ohta T, Tsuruta K, Doi H.
Long-term exposure to traffic-related air pollution and the risk of death from hemorrhagic stroke and lung cancer in Shizuoka, Japan. Sci Total Environ. 2013 Jan 15;443:397-402.

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2014/2/7

Moderately preterm(32~36週での出生)と子どもの健康及び発達に関する論文掲載のお知らせ

近年、早産で生まれてくる赤ちゃんが全世界的に増加しており、特にModeratelypretermと呼ばれる32~36週の満期に近い早産の割合が日本および諸外国で増えています。これまで満期に近い早産は、健康及び発達に大きな影響がないと考えられておりあまり研究されていませんでした。しかし、今回の日本の大規模な調査データを用いた我々の研究によると、32週未満で生まれた子どもよりも2歳半および5歳半時での健康及び発達へのリスクは低かったものの、満期で生まれた子どもよりはリスクが高くなっていました。人口寄与率で表される公衆衛生へのインパクトの大きさを考慮すると、Moderately pretermの増加には注意すべきであることが明らかになりました。

Kato T, Yorifuji T, Inoue S, Yamakawa M, Doi H, Kawachi I. Preterm Births and Child Health and Development: Japanese Population-based Study, Journal of Pediatrics. 2013; 163(6); 1578-1584.

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2014/2/7

満期出生児における出生時身長と入院に関する論文掲載のお知らせ

出生時の体重とその後の健康・発達との関連は研究が進んでおり、多くの知見が集積されています。その一方で出生時の身長とその後の健康との関連はあまり明らかになっていません。よって私たちは、満期、単胎児の生まれたときの身長と1歳半時および2歳半時の疾病罹患(入院歴で評価)との関連を調査しました。その結果、平均身長で生まれた子の健康が一番よく、平均よりも身長が高くなったり低くなったりするほど入院のリスクが高まることが明らかになりました。出生時の体重とその後の健康・発達との関連は研究が進んでおり、多くの知見が集積されています。その一方で出生時の身長とその後の健康との関連はあまり明らかになっていません。よって私たちは、満期、単胎児の生まれたときの身長と1歳半時および2歳半時の疾病罹患(入院歴で評価)との関連を調査しました。その結果、平均身長で生まれた子の健康が一番よく、平均よりも身長が高くなったり低くなったりするほど入院のリスクが高まることが明らかになりました。

Kato T, Yorifuji T, Inoue S, Doi H, Kawachi I.
Association of Birth Length and Risk of Hospitalization among Full-term Babies in Japan.
Paediatric and Perinatal Epidemiology. 2013; 27(4): 361-70.
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2014/2/5

直接効果に関する新たな指標(Proportion Eliminated)に関する論文出版のお知らせ

医学における因果推論を扱う際に、しばしば、曝露 (exposure) とアウトカム (outcome) の仲介因子 (mediator) の扱いに関心が向けられます。これまで、曝露がアウトカムに及ぼす全効果のうち、どの程度が仲介因子によって介在 (mediation) されているのかを定量的に表す指標としてproportion mediatedが用いられてきました。しかし、この指標の意義は政策決定の観点からは限られているため、この点が問題となっていました。この問題点を踏まえ、2013年にハーバード大学のDr. Tyler J. VanderWeeleが、政策決定の観点から有用と思われる新たな指標としてproportion eliminatedを提唱しました。

この度、proportion eliminatedの有用性を高めるためには、指標の定義を改めることが必要であることを提唱した論文がEPIDEMIOLOGYに出版されました。また、異なるスケールにおけるproportion eliminatedの関連性について論じるとともに、VanderWeele (2013) の誤りを指摘した論文も出版されました。

本論文で論じている内容が、今後、因果推論に関する洞察を深める上で役立つことを期待しています。

Suzuki E, Mitsuhashi T, Tsuda T, Yamamoto E.
Alternative definitions of “proportion eliminated”.
Epidemiology. 2014;25(2):308-309.
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Suzuki E, Evans D, Chaix B, VanderWeele TJ.
On the “proportion eliminated” for risk differences versus excess relative risks.
Epidemiology. 2014;25(2):309-310.
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2014/2/5

社会経済的状態と死亡との関連に及ぼす健康行動の影響に関するコメンタリー出版のお知らせ

近年の疫学理論の発展に伴い、実証研究で得られた結果を報告する際に、様々な感度分析を行って研究結果の妥当性や頑強性を高めることが広まっています。特に、これらの高度な分析手法によって、「古典的」な研究仮説に対して新たな洞察が得られることも期待されています。

この度、社会経済的状態と死亡との関連に健康行動がどのように関与しているのか、という古典的な社会疫学研究において、感度分析等の新たな手法がどのような新たな洞察を与えるか、というテーマに関するコメンタリーが、EPIDEMIOLOGYに出版されました。本コメンタリーは、パリのInsermの研究者らとの共同執筆です。

コメンタリーの対象となった論文では、marginal structural models (MSMs) を用いて時間依存性交絡因子の調整を試みたほか、変数の測定誤差に関する感度分析を行うなど、様々な手法を用いて古典的な研究仮説を検証していました。本コメンタリーでは、これらの手法を用いることにより、どのような示唆が得られるのかについて論じるとともに、因果論の観点から、本研究テーマの結果の解釈には注意が必要であることを論じています。一連の論文が、今後の疫学研究に重要な示唆を与えることが期待されます。

Chaix B, Evans D, Suzuki E.
Socioeconomic status, health behavior, and mortality: old question plus modern methods equals new insights?
Epidemiology. 2014;25(2):178-181.
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2013/12/24

日本人高齢者における結合型・橋渡し型ソーシャル・キャピタルと主観的健康に関する論文出版のお知らせ

ソーシャル・キャピタルは、結合型ソーシャル・キャピタルと橋渡し型ソーシャル・キャピタルに区別され、両者の健康影響は異なると考えられています。結合型ソーシャル・キャピタルは、社会的特性が似通っている人々との信頼や協力関係のことをいい、橋渡し型ソーシャル・キャピタルは、社会的特性が異なっている人々とのつながりのことをいいます。この度、岡山県の農村部在住の高齢者において、結合型/橋渡し型ソーシャル・キャピタルと主観的健康の関連を検証した論文が、BMC Public Healthに出版されました。

その結果、男性高齢者は結合型・橋渡し型ソーシャル・キャピタルから共に健康に良い影響を受ける一方で、女性高齢者は結合型ソーシャル・キャピタルから健康に良い影響を受けることが示唆されました。社会経済的背景が異なるとソーシャル・キャピタルの健康影響が異なることが先行研究で示唆されているため、今後は、都市部の高齢者についても検証する必要があると考えられます。

Kishimoto Y, Suzuki E, Iwase T, Doi H, Takao S. Group involvement and self-rated health among the Japanese elderly: an examination of bonding and bridging social capital. BMC Public Health. 2013;13:1189. (doi:10.1186/1471-2458-13-1189)
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