研究業績

2019/1/18

無作為化比較試験の有効性や限界に関する論文出版のお知らせ

無作為化比較試験は、因果推論における強力な研究デザインとして知られています。

先日、2015年ノーベル経済学賞受賞者のアンガス・ディートンと、哲学の教授であるナンシー・カートライトが、無作為化比較試験に対する誤解や限界について論じた論文を発表しました。

Deaton A, Cartwright N.
Understanding and misunderstanding randomized controlled trials.
Soc Sci Med. 2018;210:2-21.
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この度、彼らの論文に対して、無作為化比較試験におけるメカニズムや不確実性に関するコメンタリーを著しました。以下の通り、Social Science & Medicineに出版されています。

Suzuki E, VanderWeele TJ.
Mechanisms and uncertainty in randomized controlled trials: a commentary on Deaton and Cartwright.
Soc Sci Med. 2018;210:83–85. (doi:10.1016/j.socscimed.2018.04.023)
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このほかにも、Social Science & Medicineの本号は、「Randomized Controlled Trials and Evidence-based Policy: A Multidisciplinary Dialogue」と題して、様々な分野の研究者がコメンタリーを発表しています。

どうぞご覧ください。

2021/2/10

【論文出版】十分原因モデルに基づいた共変量バランス(covariate balance)に関して

因果推論における大きな課題の一つは交絡(confounding)です。

この度、交絡を調整するための分析において重要となる「共変量バランス(covariate balance)」の概念を精緻化した原著論文がAnnals of Epidemiologyに出版されました。

本研究では、十分原因モデルを基に、十分原因の各背景因子を関心対象である一連の共変量として用いました。その上で、関連のある背景因子の同時分布を曝露群と非曝露群間で比較して共変量バランスの条件を考察しました。

反事実モデルと十分原因モデルの対応関係を考察した結果、標的集団にかかわらず、共変量バランスが交絡バイアスを制御するための十分条件であるものの、必要条件ではないことを示しました。この知見は、十分原因モデルが反事実モデルよりも“細かい”モデルであるという事実と合致します。

加えて、十分原因を因果ダイアグラムの枠組みで示すことにより、共変量バランスの概念モデルを視覚的に表しました。

本研究で提唱した概念化は、交絡の意味を明確にするうえで非常に有用なものです。

Suzuki E, Tsuda T, Yamamoto E.
Covariate balance for no confounding in the sufficient-cause model.
Ann Epidemiol. 2018;28(1):48–53.
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どうぞご覧ください。

2016/12/5

交絡の四つの観念を論じた論文出版のお知らせ

疫学ではしばしば、因果推論における大きな課題として「交絡(confounding)」が取り上げられます。

このように交絡は非常に重要な概念であるにもかかわらず、交絡の異なる観念(notion)は十分に理解されていないため、因果推論や疫学理論における混乱が生じてきました。

この度、交絡の四つの異なる観念を論じた総説論文がJournal of Epidemiologyにオンライン出版されました。

本論文では、反事実モデルの観点から、以下の四つの観念を区別することの重要性を論じています。

  • Confounding in distribution
  • Confounding in measure
  • Confounding in expectation
  • Realized confounding

これらの観念の違いを説明するに際して、本論文では、「4人の喫煙者における禁煙プログラムの実施」という非常にシンプルな例を用いています。加えて、交絡に関する深い理解が、DAG(directed acyclic graph)という因果ダイアグラムの有用性を理解する上で必要不可欠であることを述べています。

Suzuki E, Mitsuhashi T, Tsuda T, Yamamoto E.
A typology of four notions of confounding in epidemiology.
J Epidemiol. (In press). (doi:10.1016/j.je.2016.09.003)
本論文へのリンク

本論文が、交絡の異なる観念に関する理解を深める一助となることを期待しています。


2016/11/29

因果推論におけるエラーの分類法を論じた論文出版のお知らせ

疫学研究に限らず、科学研究全般において誤差は生じるものです。

この度、因果推論においる誤差(エラー)を体系的に分類する方法について論じた原著論文がAnnals of Epidemiologyに出版されました。

疫学辞典などでも示されているように、誤差は一般的に、系統的誤差とランダム誤差に大別されます。本論文では、それらがさらにどのように分類されるかについて反事実モデルの観点から論じるとともに、DAG(因果ダイアグラム)を用いて解説を試みています。また、ランダム誤差の原因について詳説し、系統的誤差とランダム誤差の関連に関するより深い理解が得られることを論じています。

本論文は、2016年12月30日までは、以下のリンクから無料でダウンロードすることができます。どうぞご利用ください。

Suzuki E, Tsuda T, Mitsuhashi T, Mansournia MA, Yamamoto E.
Errors in causal inference: an organizational schema for systematic error and random error.
Ann Epidemiol. 2016;26(11):788–793.
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2015/6/10

クロアチアの高校生におけるソーシャル・キャピタルと健康に関する論文出版のお知らせ

近年、ソーシャル・キャピタル(人とのつながりにより得られる社会関係資本)と健康の関係を明らかにする研究が注目を集めています。しかし、これまでの研究の多くは成人を対象としており、青年期におけるエビデンスは十分に得られていません。この度、クロアチアの首都ザグレブに住む高校生3,427人を対象にした大規模疫学調査の研究結果がBMJ Openに出版されました。

本研究では、ザグレブにある高校の中から20の高校を無作為抽出し、17歳から18歳の高校生を対象として、家族、近隣、学校の三つの社会的文脈におけるソーシャル・キャピタルを質問紙調査で評価しました。そして、それらが高校生の主観的健康とどのような関連があるかを、一般化推定方程式 (generalized estimating equation: GEE) を用いて検証しました。その結果、家族におけるソーシャル・キャピタル、近隣における信頼、学校における互酬性が、高校生の健康に良い影響を及ぼしていることが示唆されました。

本成果が、今後のソーシャル・キャピタル研究の一助になることが期待されます。

Novak D, Suzuki E, Kawachi I.
Are family, neighbourhood and school social capital associated with higher self-rated health among Croatian high school students? A population-based study.
BMJ Open. 2015;5(6):e007184. (doi:10.1136/bmjopen-2014-007184)
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2015/5/11

因果指標の一般性・普遍性を論じたコメンタリー出版のお知らせ

因果推論において、因果指標を明確に定義することは欠かせません。この度、因果指標の全体像を俯瞰し、その一般性や普遍性を論じたコメンタリーがEpidemiologyに出版されました。

コメンタリーの対象となった論文で、米国エモリー大学のDr. FlandersとDr. Kleinは、従来の因果指標の定義を多変量に拡張することを提唱し、その一般的な定義を与えました。本コメンタリーは、彼らが提唱した定義の意義を明確にするため、例として、コホート研究ではよく知られているtruncation by deathの状況下で因果指標をどのように定義できるかを論じました。そして、因果指標の定義を一般化するためには、ターゲット集団を明確にすることが重要である点を指摘しています。加えて、truncation by deathの状況をDAGs(directed acyclic graphs)でどのように視覚的に表すべきかについて、potential outcomeモデルとの対応を明確にして論じるとともに、最近我々が提唱したextended DAGsへの応用も示しました。なお、本コメンタリーに対して、Dr. FlandersとDr. Kleinからのrejoinderもあわせて出版されています。

一連の論文が、因果指標のさらなる理解に寄与することを期待しています。

Suzuki E.
Generalized causal measure: the beauty lies in its generality.
Epidemiology. 2015: (In press). doi: 10.1097/EDE.0000000000000304
本論文へのリンク

コメンタリーの対象となった論文
Flanders WD, Klein M.
A general, multivariate definition of causal effects in epidemiology.
Epidemiology. 2015: (In press).
本論文へのリンク

著者からのrejoinder
Flanders WD, Klein M.
The author responds.
Epidemiology. 2015: (In press)
本論文へのリンク



2015/2/13

母乳育児と子どもの呼吸器感染や下痢による入院との関連に関する論文掲載のお知らせ

離乳食への移行期あるいは移行後でも、母乳育児の予防的な影響が残るかどうかに
ついては、十分に明らかになっていません。そこで、私たちは日本の大規模な調査
データを用いて、母乳育児が子どもの呼吸器感染や下痢による入院とどのように
関連しているかを検討しました。その結果、母乳育児は呼吸器感染による入院には
予防的な影響が見られましたが、下痢に対しての影響ははっきりとしませんでした。

Michiyo Yamakawa, Takashi Yorifuji, Tsuguhiko Kato, Sachiko Inoue, Akiko Tokinobu, Toshihide Tsuda, Hiroyuki Doi.
Long-term effects of breastfeeding on children’s hospitalization for respiratory tract infections and diarrhea in early childhood in Japan. Maternal and Child Health Journal (in press).
本論文へのリンク (PubMed)


2014/12/26

高齢者における、黄砂と救急搬送の関連に関する論文出版のお知らせ

近年、日本に飛来する黄砂の観測日は増加しており、その健康影響が懸念されています。また、人為的な発生源(車など)からの大気汚染による健康影響を、これら黄砂が増加させる(効果修飾)可能性もまた示唆されています。

本研究では、岡山市の救急搬送データを利用して、黄砂の健康(全疾患、循環器系と呼吸器系疾患発症)への直接的影響と効果修飾的影響の2つの側面を検討しました。結果として、黄砂と救急搬送の関係は、交通由来の大気汚染物質(浮遊粒子状物質)と独立して観測されました。黄砂の四分位範囲の増加により、イベント日より3日後で、全疾患の相対危険度が1.012 (95% CI: 1.004, 1.021)、循環器疾患が1.021 (95% CI: 1.002, 1.039)、呼吸器系疾患が1.026 (95% CI: 1.003, 1.050) でした。また、黄砂が多い日では、浮遊粒子状物質の増加による救急搬送の相対危険度は、循環器系疾患が1.299 (95% CI: 1.071, 1.576) でしたが、このリスクの増加は、黄砂がない日では観測されませんでした。

このように、黄砂は、全疾患、循環器系疾患、呼吸器系の疾患発生に影響をもたらし、浮遊粒子状物質の循環器系疾患への影響を効果修飾することが示唆されました。

Kashima S, Yorifuji T, Suzuki E.
Asian dust and daily emergency ambulance calls among elderly people in Japan: an analysis of its double role as a direct cause and as an effect modifier.
Journal of Occupational and Environmental Medicine. 2014;56(12):1277-83.
本論文へのリンク (PubMed)


2014/12/26

睡眠時無呼吸に対するASV治療に関する症例報告出版のお知らせ

これまで、心不全に伴う睡眠時無呼吸に対するASV治療に関する知見は、中高年の入院患者を対象としたものであり、限定的なものでした。本研究では、ASV治療の有用性をさらに幅広く検証するため、在宅医療現場における後期高齢者を対象として、心不全に伴う睡眠時無呼吸の診断からASVの導入とその治療に対する評価を行いました。その結果、ASV治療は在宅医療現場における後期高齢者に対しても有効に使えることが示唆されました。

山崎賢士,藤井基弘,藤井弥子,津田敏秀,鈴木越治.
在宅医療現場における心不全に伴う睡眠時無呼吸に対するASV治療.
[ASV treatment for sleep-disordered breathing with heart failure: an application in a home care setting].
日本プライマリ・ケア連合学会誌. 2014;37(4):342-345.
本論文へのリンク


2014/12/27

母乳育児と子どもの喘息入院との関連に関する論文掲載のお知らせ

母乳育児が長期的に子どもの健康に好影響をもたらすことが明らかになってきましたが、喘息に対しては未だ明確な結論が出ていません。そこで、私たちは日本の大規模な調査データを用いて、母乳育児が長期的に子どもの喘息入院とどのように関連しているかを検討しました。その結果、母乳育児が、生後6か月から42か月(3歳6か月)の子どもの喘息入院に予防的な影響をもたらしていることが確認されました。

Michiyo Yamakawa, Takashi Yorifuji, Tsuguhiko Kato, Yoshitada Yamauchi, Hiroyuki Doi.
Breast-feeding and hospitalization for asthma in early childhood: a nationwide longitudinal survey in Japan.
Public Health Nutr. 2014 Nov 6:1-6. [Epub ahead of print]

本論文へのリンク (PubMed)


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