研究業績

2021/6/19

【論文出版】データサイエンスにおける人工知能(AI)と疫学の位置付け

データサイエンスにおける人工知能(AI)と疫学の位置付けについて、岡山医学会雑誌に論文が出版されました。


頼藤貴志,鈴木越治.
データサイエンスにおける人工知能(AI)と疫学の位置付け―予測と因果推論の違い―.
[Artificial intelligence and epidemiology in data science: prediction and causal inference].
岡山医学会雑誌.2021;133(4):55–57. (doi: 10.4044/joma.133.55)
本論文へのリンク


2020年4月に、岡山大学グローバル最先端異分野融合研究機構にサイバーフィジカル情報応用研究コア(Cypher:cyber-physical engineering informatics research core)が設立されました。


本論文は、そのことを踏まえて岡山医学会雑誌で組まれている特集「人工知能(AI)を活用した医療の展開」の一つです。

2021/6/6

藤本竜平院生が、第116回・第118回日本循環器学会 中国・四国合同地方会で若手研究者奨励賞を受賞しました

2021年6月にオンラインで開催された第116回・第118回日本循環器学会 中国・四国合同地方会において、藤本竜平院生らの演題が若手研究者奨励賞(YIA)に選ばれました。

藤本竜平,鈴木越治,中村一文,頼藤貴志,伊藤浩.
高齢者における夏季の時間別気温変動と虚血性心疾患による救急搬送との関連.
第116回・第118回日本循環器学会 中国・四国合同地方会,2021年6月5–6日.
Program book P. 30 (Y08)

暑熱曝露は心血管疾患発症のリスク因子とされており、虚血性心疾患発症にも影響するとされます。

本研究は、高齢者における高気温と虚血性心疾患発症との時間層別の関連を評価しました。岡山市における夏季(6-8月)に救急搬送された65歳以上の高齢虚血性心疾患を対象としたケースクロスオーバー研究による条件付きロジスティック回帰分析を行いました。

気温30度以上の場合に疾患発症のオッズ比上昇を認め、男性でその影響がより強かったです。さらに同気温における疾患発症前の時間間隔毎の解析では覚知48から71時間前にオッズ比 1.16 (95%信頼区間: 1.03, 1.30)と上昇を認めました。

地球温暖化により日本でも極端な猛暑日が増加しています。本研究を通して、高齢者が暑さに晒された2-3日後の虚血性心疾患遅延発症リスクの認識は、循環器救急体制、高齢者への暑さに対する予防啓発(真夏日における室内温度の適正化や不要な外出の制限など)に重要と考えられます。

気温などの環境因子は内因性疾患に多面的な影響を及ぼし、その関連性は一定ではありません。今後も変化し続ける環境因子が疾病に及ぼす影響について引き続き研究を進めていく必要があります。

2021/10/27

岡山県クラスター対策班(OCIT)が、岡山大学SDGs推進表彰(President Award)優秀賞を受賞しました

2021年3月10日、岡山県クラスター対策班(OCIT)が、岡山大学SDGs推進表彰(President Award)優秀賞を受賞しました。岡山県クラスター対策班(OCIT)とは、医療機関や福祉施設において集団発生した場合などに、速やかに感染拡大防止対策を講じられるよう、編成されたチームです。また、事業所等への感染予防研修も実施しています。
今後の県内での新型コロナウイルス感染症の発生予防・クラスター対策・医療機関逼迫防止を目指すとともに、将来起こりうる新興感染症対策への県内での横のネットワーク設立を目指す取り組みが評価を受けました。



岡山県クラスター対策班について(OCIT)はこちら

表彰式についてはこちら

2021/3/22

【論文出版】幼少期テレビ視聴とその後の視力低下に関する原著論文

岡山大学病院眼科の松尾先生との共著論文が出版されました。21世紀出生児縦断調査(2001年出生児)を活用した研究で、1.5歳と2.5歳時に主な遊びがテレビ視聴である子供はその後の小学生時に視力低下をきたす頻度が高く、2.5歳時のテレビ視聴時間が長いほど視力低下の頻度が高いという結果でした。3.5歳以降のテレビ視聴時間との関連ははっきりせず、3歳までのテレビ視聴の重要性が示唆されます。

Matsuo T, Yorifuji T.
Television-watching in the early years of life and the association with parents’ concerns about decreased visual acuity in their elementary school-aged child: results of a nationwide population-based longitudinal survey of Japan
Jpn J Ophthalmol. 2021 Mar 16. doi: 10.1007/s10384-021-00831-x. Online ahead of print.
本論文へのリンク

どうぞご覧ください。

2021/2/20

【論文出版】脳神経外科の村井先生らとの共著論文出版のお知らせ

岡山県の中核施設による多施設共同の悉皆調査を行い、脳脊髄動静脈シャント疾患の罹患率とその推移を検討した論文がStrokeに出版されました。

10年間で393例が集積され、硬膜動静脈瘻の罹患率が脳動静脈奇形の罹患率よりも多いこと、脳脊髄動静脈シャント疾患の罹患率が増加していることを示しました。

Murai S, Hiramatsu M, Suzuki E, Ishibashi R, Takai H, Miyazaki Y, Takasugi Y, Yamaoka Y, Nishi K, Takahashi Y, Haruma J, Hishikawa T, Yasuhara T, Chin M, Matsubara S, Uno M, Tokunaga K, Sugiu K, Date I.
Trends in incidence of intracranial and spinal arteriovenous shunts: hospital-based surveillance in Okayama, Japan.
Stroke. (In press). (doi: 10.1161/STROKEAHA.120.032052)
本論文へのリンク

2021/2/18

藤永潤先生が、第48回日本集中治療医学会学術集会で優秀演題賞を受賞しました

2021年2月にウェブ開催された第48回日本集中治療医学会学術集会において、客員研究員である藤永潤先生らの演題が優秀演題賞に選ばれました。

藤永潤,鈴木越治,入江洋正,小野寺睦雄.
重症患者のBody Mass Indexと人工呼吸器依存の関係―JIPADデータを用いたコホート研究.
第48回日本集中治療医学会学術集会,神戸(ウェブ開催),2021年2月12–14日.口頭発表.

優秀演題賞:第48回日本集中治療医学会学術集会 (jsicm.org)

BMIは様々な健康アウトカムと関連し、重症患者においても重要な指標となります。低体重は重症患者における死亡率や転帰不良との関連が、肥満は人工呼吸期間、入院期間の長期化が報告されています。しかし、肥満は重症患者において死亡率が低いとも報告され、重症患者の経過に与える影響は一定しません。

本研究では、日本集中治療医学会の全国的なデータベースを用いて、重症患者における集中治療室(ICU)入室時のBMIと退室時の人工呼吸器依存状態の関係を評価しました。

レベル1を患者、レベル2をICUとするtwo-level logistic regression analysisを行い、Markov chain Monte Carlo法を用いて、人工呼吸器依存オッズ比を計算しました。

その結果、BMIが18.5未満の人工呼吸器を使用した重症患者では、BMIが18.5~23の患者と比較し、ICU退室時に人工呼吸器依存状態となる可能性が高まることがわかりました(調整済みオッズ比 1.46 (95%信用区間: 1.18–1.79))。ICUでの死亡、院内死亡、入院中の気管切開も、BMIが18.5未満の患者で増加が見られました。また、median odds ratioは1.64 (95%信用区間: 1.37–2.02) であり、ICU間でばらつきが大きいことが示されました。

今回の結果には、フレイルや低栄養状態による影響が考えられます。そのため、今後はこれらに関する指標も含まれたデータベースでの研究が望まれます。

なお、本研究に関する論文は、Respiratory Careに出版される予定です。

Fujinaga J, Suzuki E, Irie H, Onodera M.
Body mass index and ventilator dependence in critically ill patients in Japan: a cohort study using a nationwide database.
Respir Care. (In press). (doi: 10.4187/respcare.08660)

2021/2/16

【論文出版】カナダにおける、地域への帰属意識とギャンブル障害の関連

カナダにおける、地域への帰属意識とギャンブル障害の関連について、原著論文がSocial Psychiatry and Psychiatric Epidemiologyに掲載されました。


Izutsu M, Suzuki E.
Is a sense of community belonging associated with problem gambling in Canada?
Soc Psychiatry Psychiatr Epidemiol. 2021, (In press).
(doi: 10.1007/s00127-021-02040-w)
本論文へのリンク


ギャンブル障害について、個人レベルのリスク因子を評価した研究は多くありましたが、地域レベルのリスク因子に関する研究はほとんどなされておらず、公衆衛生上の対策を実施する上で課題となっています。


著者らは、地域レベルのリスク因子の一つとして、ソーシャルキャピタルの一要素である地域への帰属意識とギャンブル障害の関連について研究を行いました。本研究では、カナダの公的統計であるCanadian Community Health Surveyのデータを用いました。


地域への帰属意識がとても強い集団と比較すると、地域への帰属意識がとても弱い集団の方がギャンブル障害の危険性が高まることがわかりました(調整済みオッズ比:2.32倍(95%信頼区間:1.34−4.02))。さらに、地域への帰属意識とギャンブル障害の関連は、性別や婚姻状況によって効果修飾される可能性が示されました。


本研究により、ギャンブル障害に対する新たな公衆衛生アプローチの可能性が示されるとともに、対象集団に応じた対策を実施することの重要性も示唆されました。

2021/2/10

【論文出版】部分共変量バランス (partial covariate balance) と部分交換可能性 (partial exchangeability) について

因果推論における大きな課題の一つは交絡(confounding)です。

交絡を調整するための分析において、「共変量バランス(covariate balance)」や「交換可能性(exchangeability)」という重要な概念があります。

2020年に、ハーバード大学の研究グループが、部分交換可能性(partial exchangeability)に関する論文を発表しました。


Sarvet AL, Wanis KN, Stensrud MJ, Hernán MA.
A graphical description of partial exchangeability.
Epidemiology 2020;31:365-8.
doi:10.1097/EDE.0000000000001165.
本論文へのリンク
本論文のErratumへのリンク


この度、上記の論文における説明について、部分共変量バランス(partial covariate balance)との関係性を論じたレターが、Epidemiologyに出版されました。


Suzuki E, Yamamoto E.
Re: A graphical description of partial exchangeability.
Epidemiology 2021;32:e7-e9.
doi:10.1097/EDE.0000000000001306.
本論文へのリンク


このレターは、2018年にAnnals of Epidemiologyに出版された、以下の論文の理論的知見をもとに展開しています。


Suzuki E, Tsuda T, Yamamoto E.
Covariate balance for no confounding in the sufficient-cause model.
Ann Epidemiol 2018;28:48-53.
doi:10.1016/j.annepidem.2017.11.005.
本論文へのリンク


上記の論文については、以前、当HPでも紹介しております。
紹介ページへのリンク


あわせて、どうぞご覧ください。

2021/10/27

【論文出版】国内における新型コロナウィルスの流行期における過剰死亡の検討

国内における新型コロナウィルスの流行期における過剰死亡を評価したレターが
Journal of Epidemiology誌に掲載されました。人口動態統計を用い、2020年1月~
7月までの死亡を、過去2年(2018年と2019年)の同時期の死亡数と比較したとこ
ろ、4月には過剰死亡が生じていましたが、その他の月は過去2年と比べ死亡数が減
少していました。特に、1月~5月までの死因別死亡数の変化を検討したところ、イ
ンフルエンザや肺炎などの呼吸器系疾患による死亡、感染症による死亡、循環器系疾
患や事故による死亡が減少していました。

Yorifuji T, Matsumoto N, Takao S.
Excess all-cause mortality during the COVID-19 outbreak in Japan.
J Epidemiol. 2020 Oct 31. doi: 10.2188/jea.JE20200492. Online ahead of
print.

→本論文へのリンク

2020/9/16

【論文出版】日本におけるNO2(二酸化窒素)長期曝露と全死亡および死因別死亡と の関連に関する原著論文

日本における二酸化窒素長期曝露と全死亡および死因別死亡との関連に関する原著論
文がScience of the Total Environment誌に掲載されました。

NO2への長期曝露は、全死因、心肺疾患、および肺癌による死亡のリスクの増加と関
連していました。微小粒子状物質(PM2.5)の調整後も、肺癌のリスクの増加は依然
として観察されました。

Yorifuji T, Kashima S.
Long-term exposure to nitrogen dioxide and natural-cause and cause-specific
mortality in Japan.
Sci Total Environ. 2020 Nov 1;741:140465. doi:
10.1016/j.scitotenv.2020.140465. Epub 2020 Jun 25.

→本論文へのリンク

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